「まず止まろう、そして確認、また確認」と「しっかり止まって、はっきり確認」。
これを実行すれば事故はなくせます。日本交通心理学会の提案です!
つぎの質問にお答え下さい。
「あなたは一時停止線で止まっていますか」。
この質問には「ハイ」と答える方が多いのですが、実際にその場面を用意して運転してもらいますときちんと
停止する人は10%くらいしかいません。プロもノンプロも、企業でも、行政でも、残念ながら止まりません。
街頭で観察しても同じでクルマは止まらずにスイスイと通過しています。コンビニの駐車場から通りに出る
クルマも止まりません。横断歩道で渡ろうとして歩き始めた時、来ないはずのクルマが私の前を迂回して通過
して行きました。逆に、私が運転中に横断歩道の手前で止まって歩行者を通そうとした時、私の後を走っていた
クルマが私を追い越して行きました。歩行者を危ない目に遭わせてしまったのです。
今、止まるクルマがほとんどありません。困ったものです。人も止まりません。どちらも人がやる行動ですが、
私は人に「止まって、見る」という構えがなくなったのではないか、と思います。歩く高齢者も止まりません。
クルマがいてもいなくても止まらず、見もせずに道路を横断します。止まる構えのないクルマ(運転者)ととまる
構えのない歩行者はぶっつかります。高齢者の事故が多発するわけです。
私は「止まる構えを作りましょう、そしてよく見て次の行動に移りましよう」と言ってきました。「まず止まろう、
そして確認、また確認」、私が作ったスローガンです。そしてその後この後に記しますように「一時停止・確認
キャンペーン」を始めました。スローガンは「しっかり止まって、はっきり確認」です。
もう一つの質問です。
「あなたは周りをはっきり見ていますか」
私はこれまで長年、運行管理者や安全運転管理者に「困り事は何か」とたずねてきました。昨年も少し大がかり
な調査を行いました。「何よりも細かい事故がくり返し起こる、ほんとにつまらぬ事故が多い、止まった(一時停止
した)と言うのに実際には止まらず、よく見ていなかったためにぶつかった」などの話が多く出ました。「大事に至っ
てはいないが、一つ間違えば大事故にもなりかねないことがある」ので困っている、というのです。この質問は10
数年続けているが年を経ても変化のないことに驚いています。構内におけるバック事故の多発、無信号交差点で
の止まらないための出合い頭事故の多発が目立つのです。
筆者が共同研究を継続しているアルピコタクシー(長野県諏訪市)の最近4年間の事故発生状況は、同社のご
了解を得て記すと「安全不確認」による事故が最も多く、その発生率は有責事故件数の70%です。もう一つの共同
研究会社横浜・東京大栄交通の場合も同じ傾向ですが、発生率を書いてもらって驚きました。「安全不確認」による
事故が90%というのです。どちらでもスピード超過や酒酔いによる事故は発生していないのです。
これを要するに、今も昔(30年位前)もわが国では「周りをよく見ない(確認しない)、止まる(べき)ところで止まら
ない」ために発生している事故が極めて多いのです。
ではよく見る(確認する)ためにはどうすればよいのでしょうか。安全確認の条件を示しましょう。 中心視する
(ものを目の中心で見る)ことです。視力検査の時、検査図をまっすぐ前方でとらえましが、そのようにしてよく見る
のです。
瞬間視を避ける(チラッと見ても分からない) ことです。見るべきもの(クルマや人)に目を向けている時間を長く
する。
動態(自分が動いた状態)でなく、静態(止まった状態)で見ることです。カメラぶれをなくす:見るものを「ぶれない
で」とらえることです。
視力を確保する。 眼鏡の調整、健康管理(疲労、病気の回避:医学的対策)、スピードを出さないこと(スピード
が上がると視力が低下する)、飲酒しないこと(飲酒状態では視野が狭くなる)です。
見やすい視環境に整備する。照明などの改善によって見やすい環境を作る。停止策としてハンプ(ランプ)を作っ
たりする。(工学的対策)
このうち、1から3までの要件を達成するために有効なものが「一時停止による確認」なのです。一時停止により、
周り(クルマや歩行者など)がハッキリと見えるようになるのです。
(文責 長塚康弘:名誉会員・新潟大学名誉教授)
・「一時停止・確認キャンペーン」について—特にその淵源と現状—
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・「一時停止・確認行動」をテーマとした教育プログラムについては、太田博雄
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(東北工業大学名誉教授)による解説をご参照ください。